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第2回日独木造建築シンポジウム

2017年11月8日(水) 〇  

岐阜県立森林文化アカデミーで開催された第2回日独木造建築シンポジウムの木造建築分科会に参加しました。昨年の今頃開催された第1回に引き続き、ドイツ・ロッテンブルグ林業大学のルトガー・デデリッヒ教授が来日しています。今回のシンポジウムは10:00amに開始し、デデリッヒ教授を含むお三方の基調講演とパネルディスカッションと盛りだくさんでした。

基調講演のトップバッターは名古屋大学大学院生命農学研究科の山崎真理子先生。「日本における建築木質材料の特徴 強み・課題」。山崎先生には「都市の木質化連続講座」他でも大変お世話になっています。

171108-日独木造建築シンポジウム01

日本の森林率は66%でフィンランドに次ぐ世界2位の森林大国だが、明治維新以来の西洋化、第二次世界大戦、木材の輸入自由化等の"木造建築の暗黒の時代"を経験した。しかし現在は、阪神淡路大震災等を機会に木造建築の研究者が増加し、京都議定書(COP3)やパリ協定(COP21)が追い風になり、2000年に18%程度だった木材自給率が現在30%にまで改善している。

現在の日本の課題は、林業~林産業~建築業の連携が乏しい。この垣根を取り払って"森林資源産業"の確立をオールジャパンで目指すことが求められている。そして木材利用という文化をもう一度日本に根付かせなければならない。

続いて、首都大学東京の小泉雅生先生による「日本におけるエネルギー・温熱環境の特徴・強み・課題」。

171108-日独木造建築シンポジウム02

日本とドイツを比べると、日本は冬にも日射があり、夏場はドイツ人のようにバカンスに出掛けず、風呂は夕方に入るので(ドイツ人は朝)、日本人はもっと太陽熱を利用すべき。ゴモットモです。

日本の住宅を語る上でよく引用されるのが、吉田兼好の徒然草55段「家の作りやうは、夏をむねとすべし。冬は、いかなる所にも住まる。暑き比(ころ)わろき住居は、堪え難き事なり」だが、1970年代石油ショックを経験し、現代の日本は"夏も冬も旨とする住まい"を目指さなければならない。ゴモットモです。

小泉先生は国土交通省の2013年のプロジェクト「LCCM住宅」の開発にも携わっていらっしゃって、その解説もありました。
・ 基礎コンクリートのCO2が大きいため布基礎を採用した。
・ 木材は、乾燥エネルギーは輸送エネルギーよりもはるかに大きい。
・ 北側に通風塔。温度差による重力換気。夏の蒸し暑さ対策。
・ 通風と採光に有効なパラボラ壁。
・ 衣替えする住宅。
・ 30~35年でLCCM(ライフサイクル・カーボン・マイナス)が実現する試算。
・ 環境配慮型住宅は建設時のCO2にも配慮すべき。

昼食休憩を挟み、午後はいよいよデデリッヒ教授がご登壇。「木造建築における木材、そして競合する木材」のお話。

171108-日独木造建築シンポジウム03

ドイツは無垢材、集成材、合板、LVL、CLTと、利用できる木材技術全てが存分に活用されている。大型木造施設も当たり前のように建築されている。この2年ほどで"過小評価されている巨人"ブナ材が利用できるようになり、ブナのLVLは鉄骨にも匹敵する強度。

ヨーロッパでは集中的な都市化が進んでいる。田舎では住居が余り、都会では住居が不足している。いかに住宅を早急につくるかが課題。

ロンドンでは木造建築ブームで、今後メッカになる勢い。ヨーロッパには建築時の炭素税があり、これが追い風に。ノルウェーの14階建てが現在ヨーロッパで一番高い木造だが、更に15階建て(CLT)が2020年にストックホルムで完成予定。新築のみならず、既存施設の屋上にCLTで増築する事例も多数あり。

大型木造建築では、階段室をコンクリート造とし、居住空間を木造とするのが基本。階段室は建物の中央には設けず外側に配置するのが通常。先般のグレンフェルタワー火災はポリウレタン断熱材が燃焼したが、なぜか木造禁止が囁かれている。政治的ロビー活動が原因のようだ。

ドイツには積極的な木造化に対する十分な森林資源が備蓄されている。木材のエネルギー利用も増加傾向。木材価格は石油価格により変動する。

デデリッヒ教授は、「標準品を使って唯一無二の作品を作ることが大切」とご講話を結びました。

そしてシンポジウムの最後は、講演者お三方に大和リースの小林氏、そしてアカデミー講師陣を加えてのパネルディスカッション。

171108-日独木造建築シンポジウム04

最初に盛り上がった話題がメンテナンス。建築には、そもそも木材にはメンテナンスが付き物で、木材のメンテナンスは住まい手自らができて省コスト。"メンテナンスフリー"とはつまりメンテナンスの"楽しみ"を奪うこと。とは言え、メンテナンス量やメンテナンス勝手を意識して木材を利用すべき。ドイツではメンテナンス費として年間12€/㎡を積み立てている。日本でもメンテナンスは"コスト"ではなく"マーケット"であるべき。

ドイツの住宅は75~80%が枠組み壁構法で無垢材利用が多く、構造材はSPF材が主流だが、日本では桧・杉・唐松。ドイツではブナ材をLVLやCLTで活用しているが、日本ではブナは主に家具材。日本にはブナはさほど量がない上、腐朽菌に弱く日本の気候では建築用材には向かない。逆に菌類の培地に最適。

最後にパネラー一人一人より締めの一言。
山崎先生「林業・林産業・建築業の壁を取り払って、"森林資源産業"を目指すべき」。
小泉先生「建築業界の新しい基準に着いて行っていないのが地方の工務店と零細の設計事務所。それでは生きていけない」。
デデリッヒ教授「昔からの伝統への敬意を持つべき。そこにある価値を評価すべき」。
小林氏「木の意匠が社会に受け入れられることが大切。木には木の特性があり、鉄の代わりを求めては無理がある」。
辻先生「メンテナンスの覚悟が日本の社会では薄れている。人材をどうやって田舎に呼ぶかが課題」。
吉野先生「田舎から都会にどうやって木を売るかが課題。特色を活かして」。
松井先生「森林資源産業のように、大きなスケール、長いスパンの発想をドイツから学べるのではないか」。

基調講演三本立てとパネルディスカッションに同時通訳も付き、第2回は第1回より数段パワーアップしていました。第3回はまだ未定だそうですが(補助金次第という噂もありますが)、是非とも実現して欲しいと思います。ありがとうございました。

中島 大地

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